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黒錆



書籍 "赤毛のアン" 著:ルーシー・M・モンゴメリー 訳:松本侑子

 そもそもこれを読もうと思った切っ掛けが"R.O.D -THE TV-"という実にひん曲がった理由だった訳だけれど、どういったものなのかさらっと知る為にでも読んでおこうと思い借りてきたものの比較的真面目に読んでいた自分がいたり。アンすげえよ。お掃除だ、今だ必殺アッパーだ、とか言ってる場合じゃない。
 翻訳本の所為というのが多分にあるんだろう。どうも口調上奇妙に感じる部分が多々あったけれどもあれはもう好みの問題になってくるんだろうな。どうも中途半端に堅くて、中途半端に柔らかい口調の台詞ってのには違和感を感じてしまうタチで。一番違和感が残ったのはアンとダイアナが語り合う場面での二人称「あんた」。普通に「あなた」でええやん。同年代の女の子が同じ年代の間柄で「あんた」呼ばわり。文学上あり得ない(あり得て欲しくない)呼び方だなぁと思う。それに、原書は英語なんだから独語と違って親称・敬称の差というものが(無いことはないだろうけれども)それほど露骨には無いだろうし。もうちょっとこう(文学的に)自然な訳が良かった。別の訳なら要望通りなのかしら。
 文学的に、なんて抽象的なことを言ってごまかしてみるテスト。




 最初のアンの登場からこの娘は1頁~2頁をゆうに占める長台詞を放ってくれやがり、その内容も内容で「うわぁ電波だ、電波娘だ」とか思って投げ出しそうになったけれども堪えて読み続けることに。次第にそれが自然に感じられてくる頃まで読んでいくと、アンも成長しちゃってあまり空想的なことやら大げさな言い回しを言わなくなってきて物足りなく感じたりもする。この配分、著者・訳者は意図していないんだろうけれどもバランスという物を感じさせられた。
 一つ一つの出来事が一から十まで完結しないでただ事柄だけを列挙したり事柄への誰かしらの感想だけが並べられたりする事がよくあるので、消化不良に感じる部分も少なくないかも知れない。そこは想像力でカバーする訳ですよ。文学的に。

 そしてあの名文句、「God's in his heaven,all's right with the world.」の訳もやはり判りやすい訳になってしまっていて、ちょっと残念。こういう詩からの引用とかはもっと堅く訳してしまっても良い気がするんだけれども。この訳者さんの訳では「は天に在り、この世はすべてよし」となっていたんだけれども、"R.O.D -THE TV-"最終話で読子たんが言うあの台詞「は我らが天にあり、なべてこの世は事もなし」と比べると、明らかに後者の方が語調が良く感じられる。日本語の7・5調に、語調の良さを感じるのは日本人の性質か。それとも僕だけの妄想か。
 とにかく、全体が堅い訳になっちゃうと読むのが辛いけれども、こういう部分まで判りやすくされちゃうとちょっと残念な気がしてしまうという、みょんな問題に悩んだりしました。

 この訳本の訳者さんは"赤毛のアン"に於ける台詞や言い回しの原典に関して突き詰めて書かれる方で、注にはこれでもかとばかりびっしりとその言葉の引用元が並べられていていちいち興味を惹かれる。特に聖書が絡むお祈りの言葉とか名台詞(?)は興味津々で。今手元に新約・旧約両方聖書がないことを切に悔いる感じ。かといって借りる気にもなれないし…。どこやったかな、聖書。

 想像力豊かな十代前半の女の子にはひたすら疲れさせられるというみょんな読後感を覚える本でしたとさ。続編とかにはあまり興味がないのでスルーの予定。
 原書で読め?バ-ローwwwwwwwwwwwww
by kurosabi | 2006-06-13 00:55 | 感想
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