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黒錆



新書 "自殺ドミノ 自殺事件に巻き込まれた人々の恐るべき証言" 著:石原行雄

 本編に入る前に。

 最近曲うp用と化していて殆ど機能を発揮していないblog。その物あればその内何かの役に立つかな、程度の認識で残していたけれども、そんな消極的な事ではいかんと思う訳で。
 日本でblogと言えば"日記"(強制括弧付き)とほぼ同一視される昨今、そんなに積極的に"日記"何かを書く気にはなれないし、本来の意味でのblogなんか書き続けられる気もしない。そもそもそんな突起すべき様な面白い日常送ってないし、面白くもない事をさも面白可笑しい事件かのように書き立てる穿った見方を出来る人間でもないし、むしろネガティブな視点で物事を見る人間だから……と、さんざ理由をつけたりつけなかったりして放置を続けてきた訳ですが、せめて感想くらいは書けるよな、な?という事でこれからも読んだ本に関して感想だけはちゃんと書いていこうと思った次第。

 何か小難しそう(それでいてその実頭の悪そうな)長文で始まっていますが、一言で書けば以下の様に集約すると思う。


 「夏休みなので、読書感想文書くよー」





 書店の新書コーナーで一際目を引く黒い表紙。晋遊舎ブラック新書という名の付いた見るからにブラックなこの新書は、世の中に蔓延しながらもあまり耳には入ってこないブラックな真実を各方面の識者がこっそり教えちゃうよと言った体裁を取ったシリーズ。べ、別に暴露本って訳じゃないんだからね!
 別に薄っぺらいツンデレ定型文を挟む必要はどこにもない訳だけど、ともかく、どこまで信憑性のある話なのか計り知る事は叶わないけれども、これらの本に書かれたこういった現実もちゃんと社会には存在しているんだよ、世の中綺麗事だらけじゃないんだよ、という認識を無くさない為というか、現実から目をそらすなよという自制というか、そういう目的で買ってみたのです。それが偶々自殺の話だっただけで。

 表題に在るとおり、自殺はドミノのように作用するらしい。
 考えてみればまぁそうだろうな。老衰だろうか事故だろうか病気だろうか、それは人に因って違いがあるだろうけれども押し並べて忌み嫌われ、普通は自らも避けたがる「死」というのを、自らの手で遂行しちゃうということ自体が既に「異常」であると捉えるのが普通なんだろう。そして、その「異常」事態が当人の死亡だけで片付くかと言えばそんな簡単な話ではなく、当人の周辺に事後処理が付き纏う。中には知古である訳でもない、たまたまその現場に居合わせただけの赤の他人にまで深い傷を残しかねない。手段や場所に問わず、少なくない迷惑をかけてしまう自殺を本書は"醜い死"であると断言。敢えて"死人に鞭を打つ"事を厭わず、自殺者に対して、どのような理由があれ"貴方のしたことは間違いでした"と主張する事で、今日の日本での自殺というものがどういう現状を迎えているのかを世の中に認識して貰い、自殺防止に役立てることができれば、と前書きは結ばれている。

 自殺者本人の遺言ではなく、自殺者の周辺のその後を追う証言集という形を取っている為、想像以上に重い話が続く。続くというか全編に渡ってそんな具体の鬱々モード。鬱々モード、鬱々モード。鬱々モード☆鬱々モードでーす♪「練炭自殺キス 、したくなっちゃった…」とかなんとか、やや小懐かしいネタでお茶を濁している場合じゃない。
 配偶者が自殺。その事を故人の両親に「娘が死んだのはお前の所為だ」と責め立てられ、自身も(それも配偶者と同じ方法、同じ場所で!)自殺。この事を受けて、今度は夫側の両親が妻側の両親を「息子が死んだのはお前達の所為だ」と口汚く罵る――。不謹慎ながら、一見ギャグにしか思えないようなこの負の連鎖、まさにドミノ倒しその物。
 相続や債権の取り合い・押し付け合いではなく、配偶者の自殺に因って少なくない額の保険金が手元に転がり込んできた所為で金銭感覚が狂ってしまった未亡人、なんて話も載っており、やはりどこにも救いは求める事が出来ない。

 自殺で死んでみた事は無いし、自殺で死んだ知り合いから話を聞いた事もないので(口無しですから)想像で書くしかないけれども、死ぬ事に救いを求めた上で敢行した自殺に於いて、果たしてその人は本当に救われたのだろうかと問われると、一時的な逃避や気休めとして楽にはなったのかもしれないけれども、それが本当の意味で"救い"なのかなぁと甚だしく疑問を感じる次第。でもそれは死ぬ事によって救われたと感じるような超弩級修羅場的体験をする事無い甘っちょろい人生を歩んでいる自分だからかもしれませんが。

 ただまぁ、真剣に命を賭して悩んでいる人もいれば、本気なのか遊びなのか判別出来ない、或いは完璧な騙りだという様な輩まで実在したりする非常にナイーブな話題である事も確か。どちらかといえば後者の様な輩にばかり目が行ってしまい、非常にネガティブな心証を植え付けられている自分としては、安易に「自殺?どうぞご自由に」なんていう(これでもかなりオブラートに包んだ表現だけれども)反応はしちゃいかんのだろうなと思った。別に、その当事者があたいの言葉にニトロを積まされたと思って敢行しちゃうなんて事態に波及した場合を恐れているという訳ではなくて、当事者周辺の、あたいからすれば第三者に迷惑が及ばない様にとかでもなくて、あたい自身が次なる自殺者となって周囲に迷惑を掛けたくないが為に。

 まー、世の中には斜に構える事が生きる事よりも好きなんて輩もおわす訳で、当事者を除く周囲に迷惑を掛けたいが為に自殺をするなんていうどうしようもない自殺者もいたりする様だから注意が必要だ!注意しててもしちゃう奴はしちゃうんだけどね。 
 自棄起こして全然全く何の関係もない人間を殺したりしちゃうよりは自殺の方がマシかもしれないけれども、どのみち人が死ぬって点には変わらないからその変をよく覚えておけばいいんじゃないだろーかとか。



 あれあれ?でも自殺したらそれはそれで三途の川を渡ったり、閻魔様に会ったり出来るって事ですよね?
 ちょっとこまっちゃんとえーきに会いに、練炭買ってくる。
by kurosabi | 2008-08-08 16:19 | 感想
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